こんにちは。そめです。
さて、みなさんは「P&Gマフィア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? マーケティングに従事している人であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
大手消費財メーカー・プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)出身で、P&Gを去った後に、他社で業績アップの中心人物となっている人たちのことを指します。
森岡毅さん、足立光さん、西口一希さんなどが有名ですね。
彼らの実力の凄さの元となる、マーケティングのフレームワークや、基本に忠実な戦略論のお話はここではしません。
もうすこし別の観点、「進化心理学」の観点から組織論と合わせてすこ〜し一般論とは違う観点で考察してみたいと思います。
ちなみに本記事は、P&Gマフィア批判のたぐいとは全く違うことは予めお伝えを・・・。(タイトルからそんな期待を持たれた方はすいません・・・)
僕自身は出る書籍は読むし、動向は追いかけるし、そこそこ高額な伊東塾に初回から入塾するくらいの、追っかけではありますので、むしろマーケターとして尊敬と好意と敬意をもって、文章をしたためさせていただければと思っております。
もし、変な不快感を感じたらごめんなさいね・・・。
リーダーシップの型
ウィリアム フォン・ヒッペルの著書「われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略」という著書があります。
マーケティングと親和性があることを強く感じた一冊で「人間=ホモ・サピエンス」が持つ性質を、進化の過程から読み解く名著です。
さまざまな興味深い考察が書かれているのですが、その内のひとつに「リーダーシップ」に関する記述があります。
この本の中でリーダーシップの型を2種類に分けて説明しています。それが「ヒヒ型のリーダーシップ」と「ゾウ型のリーダーシップ」というものです。
それぞれについて、説明していきます。
ヒヒ型のリーダーシップとは?
ヒヒは雑食性の生き物です。
ヒヒのリーダーは、自己奉仕的で利己的です。
果実や植物を食料とするだけでなく、狩りをして肉も食べます。つまり積極的に自分たちの種以外の生物と戦わなくてはならず、限りある餌の奪い合いに勝たなくてはならないのです。
しかも、ヒヒは常にヒョウやライオン、ハイエナなどの外敵から狙われており、集団を形成することで種の安全性を担保しなくてはなりません。
なので、ヒヒの集団は力の強いオスが出世し、階層を形成します。
強いヒヒが下の階層を育成するかというとそういうこともなく、あくまでも自己奉仕的で、利己的な目的意識が根底にあります。部下が自身の地位を脅かそうとすれば、集団にとって非合理な手段(情報共有の制限やメンバーの排除など)をとって、地位を守ろうとします。
ヒヒの特性は、常に危険にさらされ、高カロリーの餌は奪い合いになるような環境要因が、このような構造を形成する進化圧になっているようです。
重要なポイントはここです。
シンプルに言うと、限られた量の餌を獲得し、外敵からの驚異から集団を守れるだけの力をもったヒヒが、リーダーになるということです。
ゾウ型のリーダーシップとは?
一方でゾウは草食動物です。
基本的に植物は広範囲に点在し餌の確保に困ることがなく、しかもその恵まれた体躯から天敵はほぼ存在しません。
またヒヒと違い、メスが集団のリーダーを務めます。移住やライオンなど外敵からの驚異に対応するための支持をオスに与えなどの取り仕切りを行います。
リーダーは特段他よりも優位な条件や利益を得られるわけでなく、集団全体が平等に利益を得られるように振る舞う、集団奉仕のリーダーシップです。
こういったリーダーシップの特性は、餌の確保に苦労することなく(独占も難しい)、外敵の脅威も少ない環境から形成されています。
つまり、リーダーは集団の利益を独占するものでなく、あくまでイチ役割に過ぎないということです。
収益構造と組織
さて、なぜここまでゾウとヒヒのリーダーシップに差が生まれるのでしょうか?
「餌の総量」「外的環境」という視点でおさらいしてみると、ゾウは資源の再配分で苦労する必要がなく、外敵からの驚異もさほど大きくありません。しかし、ヒヒは常に資源の再配分の問題がつきまとい、外敵からの驚異にも対応しなくてはなりません。
こういった要因が、集団のリーダーシップのあり方に影響を与えていると考えることができそうです。
ここで考えたいのは、我々人間のリーダーシップはどうかということです。こういった環境要因によってあるべきリーダーシップの型は変わるのではないか? という問いに対して、皆さんはどう考えるでしょうか?
企業というフレームで考えてみても「収益構造」や「外的環境」によって、集団の持続可能性に大きな影響を与えます。
■収益構造
- 原価率
- 人件費率
- 顧客単価 etc...
■外的環境
- 競合企業の数 / 質
- 参入障壁
- ユーザーのライフスタイルの変化 etc…
など企業を持続するための要因は多岐に渡り、選択する市場によって優位・劣位があります。リーダーはその環境に応じた戦略構築を求められるでしょう。
参入障壁が低くコモディティ化した市場と、参入障壁が高く収益が安定している事業体では、戦い方がガラッと変わるため、それに応じて求められるリーダーシップに差が出るのではないかという考えです。
GoogleだからGoogly
Googleはre:Workという組織やリーダーシップのあり方を考えるサイトがあり、Googleが考える様々な組織論を見ることができます。
読めば読むほど納得感があり首肯する場面がとても多いです。
「我々もこうあるべきである」
そう考え、実際に組織に反映しようと奮闘する方も少なくないと思います。
しかし、すべての業界業種でこの組織論が通用するのでしょうか? Googleが提示する組織論が、盲目的にすべての市場における生存戦略的に優位な立場を構築するためのツールとして機能するかには、いささか疑問が残ります。
もちろん心理的安全性の担保など、普遍的に重要な要素は存在することに、異論はありません。
しかし、Googleの親会社であるAlphabetは言わずもがなの高収益企業であり、Webで広告を出稿しようと考えたときにGoogleという選択肢が上がらないことはない、といっても過言ではないほどの独占的な地位を獲得しています。
それは言い換えれば、自立駆動的で個々の主体性を重んじることのできる「ゾウ型のリーダーシップ」が機能しやすい「環境要因」が整っていると言えます。
20%ルールなどは顕著ですが、裏を返すと20%の人的リソースをチャレンジに使えるだけの収益構造が確立されているからこそであるとも言えます。
一方でパイが限られており、コモディティな市場境下で成果を出すために、同じ組織論が通用するでしょうか?
コモディティ化した市場で勝ち抜くということ
独占的な市場とは違い、同じような機能的便益の中で、限られたパイを取り合う市場、いわゆるコモディティ化した市場で消費者で選ばれるということは、並大抵のことではないというのは想像に難しくありません。
この環境下で戦い、成果を残してきた人こそが「P&Gマフィア」と言われる方々です。
直接お話をさせていただいたことのある、「P&Gマフィア」と言われる方のうちの1人は「僕は利益を出す、ということ以外に興味がない」と明言されていたのを思い出します。
率直に「ヒヒやなあ」と思ったものです。
そうです。
「ヒヒ型のリーダーシップ*」を発揮できる人間こそが、そういった市場環境下において企業の生存確率を上げるタイプなのではないでしょうか?
わずかの差異が商品の選択確率に大きな影響を与える環境下において、チームの細部までの仕事をコントロールし、マイクロマネジメントしながら、勝つ方向へ牽引するリーダー。
自由や主体性を重んじるリーダーシップとは、対極的なリーダーシップこそが、コモディティ化で勝つ組織を構築するのに適しているのかもしれません。
とあるP&Gマフィアの方と一緒に働いたことのある人間から話しを聞きましたが、その「ヒヒぶり」は凄まじいものがあるそうで、脱落していく人も多かったようですよ。
※ ここでいう「ヒヒ型のリーダーシップ」の利己性は、餌の独占ではなく、市場で勝つためのこだわりの強さ、と捉えてもらえると嬉しいです
リーダーシップに「べき論」はない説
さて、ここから導き出される僕の仮説はこうです。
企業のサスティナビリティを軸としたときに、リーダーシップのあり方は市場環境や収益構造によって定義されるのではないでしょうか?
ですので、「リーダーはこうあるべき」というべき論は、市場や事業構造によって定義されるべきというのが持論です(あくまで企業のサスティナビリティを軸としたとき)。
そして、P&Gマフィアの方がギラギラと勝ち気に市場を席巻できる理由。
それは、大衆向け消費財という圧倒的にコモディティ化した市場で勝つ術を磨く集団の中で勝ち上がってきた経験から、「ヒヒ型のリーダー」として優秀であるからといえるのではないでしょうか?
みなさんこの意見に関してどう思われますか?
環境によってヒヒにもゾウにもなるべき
この仮説をとある有名な上場企業で組織のチームビルディングを担当されている方に、ぶつけてみたところ大いに賛同いただきました。
ですのでもし自分の中に「理想とするリーダーシップ」があるのであれば、いま一度「それはいまの市場環境において最適か? 」を問うてみると、より市場において勝ちうるリーダーとなれるかもしれません。
ゾウ型のリーダーシップを発揮したいと思っていても、市場で勝つために求められているリーダーシップは「ヒヒ」かもしれないからです。
逆もまた然りで、「ゾウ型のリーダーシップ」を求められる環境下において「ヒヒ」の振る舞いをすることは、組織の崩壊を生む原因になるかもしれません。
ゾウ型のリーダーの下で働きたいなら、市場選択を間違えない
「ゾウ型とヒヒ型のリーダーでは、どちらのリーダーのもとで働いてみたいですか?」と言われたときに、みなさんならどう答えるでしょうか?
多くの方は、ゾウ型のリーダーがよいと答えるかもしれません。
その際は見るべきは「その事業や市場がコモディティ化していないか?」というところかもしれません。
また、「強いヒヒ型のリーダー」の下で働けば、得るものが多いのも事実です。あなたは、どのタイプのリーダーと働きたいですか?
まとめ
まとめると、市場で企業が生き残るのに最適なリーダーシップは、収益構造や外的環境に起因するのでは? という主張です。
これは、今市場のリーダーシップはこうなっている、という話ではもちろんありません。独占的に市場を席巻している企業の中でヒヒ的なリーダーシップが跋扈していることもあるでしょう。
さらに、組織論として語るには横暴なくくりであることも理解しながらも、「そんな視点も確かにあるかもね」というくらいに読んでいただけると筆者としては幸甚です。
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最後までお付き合い、ありがとうございました!!
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